バクテリアセラピーとは

今、善玉菌の働きを活かし、全身の健康を整える「バクテリアセラピー」という健康法に注目が集まっています。
特に、人体の中で重要なバクテリアの住処である「口」について、バクテリアのバランスを整えることは、全身の健康のためにもとても重要です。

ロイテリ菌

🦷 殺菌だけでは健康は維持できない

健康のために体内のバクテリアのバランスと多様性を維持することは、とても大切です。
すでに広く知られているように、バクテリア(細菌)には善玉菌と悪玉菌があります。
また、善玉菌を増やすことと、善玉菌と悪玉菌のバランスを取ることが重要であると言われています。
一方で、あまり知られていない重要な点として、あまりにバクテリアの量が少なくても病気になってしまう、ということが挙げられます。
つまり、悪玉菌を減らそうと無理に殺菌してしまうと、一緒に善玉菌をも減らしてしまい、むしろ逆効果になる可能性があるのです。
あくまでも善玉菌と悪玉菌のバランスを取ることが重要となります。

🦷 バイオフィルム(フローラ)とは?

自然界では、いろいろな種類のバクテリアがたくさん集まってコミュニティを形成し、共生しています。このバクテリアの共生状態の存在をバイオフィルム(フローラ)と呼びます。

よく耳にする「フローラ」は、細菌だけにフォーカスした表現です。一方で、「バイオフィルム」は、フローラとその周辺物質が合わさったネバネバのような、実際に存在する形のことを指します。

このバイオフィルムは自然界のありとあらゆるところに存在します。例えば、キッチンのネバネバのところから、下水にいたるまでです。

バイオフィルムは人体の中にも存在しており、大人一人あたり体内に2kgものバクテリアを持っています。そんな人体の中で、最も重要なバイオフィルムがある場所が口内と腸管内です。

🦷 善玉菌10対悪玉菌1のバランス

バイオフィルムのバランスが崩れると、体の不調につながってしまいます。
例えば、人の1mgの歯垢の中には、地球上の全人口を超える数の微生物が入っています。健康を保つためには、善玉菌10対悪玉菌1のバランスが最適です。

しかし、そこで糖分を取りすぎると、バイオフィルムにストレスがかかり、善玉菌と悪玉菌のバランスが崩れ、立場が逆転してしまい、その結果むし歯ができてしまう可能性があります。バクテリアで重要なのは数ではなく、バランスなのです。ロイテリ菌

バクテリアのバランスをコントロールする方法

糖分を摂りすぎると虫歯になるように、バイオフィルムのバランスが崩れると体の不調につながってしまいます。

そこで、悪玉菌を殺すのではなく、口腔内のバクテリアをコントロールして健康を保つ「バクテリアセラピー」という考え方。バイオフィルムをうまくコントロールすることで、バランスが崩れることに対する耐性を高めることができます。

一般的な方法としては、口腔内の衛生を保つ、唾液と酵素でお口の健康を保つ、フッ素入り歯磨きを使う、糖分やジュース類を控えるといったものが挙げられます。

🦷 優れた善玉菌(プロバイオティクス)を摂取する

バクテリアセラピーとは、優れた善玉菌(プロバイオティクス)を摂取することによって、悪玉菌を抑えるという健康法。より多くの善玉菌を住まわせることで、悪玉菌の住む場所を減らし、それにより、バクテリアのバランスを正常に保つことができます。

プロバイオティクスというのは、人の身体に良い影響を与える微生物のことを言います。例えば、母乳に入っている乳酸桿菌(にゅうさんかんきん)や、腸に入っているビフィズス菌が挙げられます。

プロバイオティクスの摂取が健康に与える影響についてはさまざまな研究がされており、実際、免疫の調整やバクテリアのバランスに良い影響を与えることなどがわかってきています。

ロイテリ菌

🦷 口腔内だけでなく、全身の健康につながる

バクテリアセラピーはお口だけをケアするという印象があるかもしれませんが、実はお口の中だけでなく、全身の健康につながっていくのです。

プロバイオティクスを摂取すると、お口の中からバクテリアのバランスが健全な状態になっていきます。そうすると、ドミノ倒しのように、健康的な効果が続いていき、やがて全身の健康に結びついていきます。お口は体の入り口です。そのため、まずはお口からケアを行うことが重要なのです。

実際に、北欧諸国では、優れたプロバイオティクスを含む牛乳の継続的な摂取によって、子どもの虫歯を約30パーセントも減らすことができたという調査結果があります。また、高齢になると唾液が減り、虫歯になりやすくなりますが、高齢者を対象にした調査でも乳酸桿菌を含む牛乳を摂取することで虫歯の進行を抑えられたという調査結果もあります。

ただし、プロバイオティクスを取り入れることは従来からの科学的根拠のある療法に代わるものではなく、上乗せして行う健康法であるという認識は重要です。

現在では抗生物質が効かない耐性菌が出てきているため、これからの時代は、抗生物質を使わないバクテリアセラピーのような健康法が大切で、これは世界的に実施されてきています。例えばヨーロッパでは、14カ国で健康的な食事のガイドラインの中にヨーグルトが含まれています。またEUの5カ国では実際に、プロバイオティクスのバクテリアの使用が推奨されているのです。

自然にあるものによって、人の健康を高め、維持することが大事。
バクテリアを殺すということではなく、体内にあるバイオフィルムを良い状態にコントロールする考え方。
特に口と腸は全身の健康に関わっており、積極的に善玉菌を取り入れることは重要です。

※Ohayo Biotechnologies Inc.のスヴァンテ・ツェットマン博士の講演内容を、日本語に訳してまとめたものより引用。

スヴァンテ・ツェットマン|Svante Twetman
歯学博士・小児歯科専門医
1974年スウェーデン王立カロリンスカ医科大学歯学部卒業、博士号取得。
デンマークコペンハーゲン大学保健医学・歯学部カリオロジー科主任教授、小児歯科専門医。主に小児および若年成人における健康及び疾患状態におけるバイオフィルムの役割、リスクアセスメント、そしてカリエス予防に焦点を当てた研究を行う。250件以上の論文を執筆し、世界的に講演を行っている。